台本を置けば、あとは寝ていても——青空文庫の朗読動画を無人レンダリングする仕組み
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夜、眠る前に何かを聴きたい人へ向けて、「眠れる名作朗読【全文字幕】」というYouTubeチャンネルを運営している。著作権保護期間が満了した名作——宮沢賢治や新美南吉など——を合成音声で朗読し、全文の字幕を付けた動画を毎日1本ずつ公開している。今回は、この動画をほぼ無人で作る仕組みの話。
題材を権利の切れた作品に絞ったのは、朗読という形式が原文の全文をそのまま使うものだからだ。パブリックドメインの名作なら、本文を丸ごと字幕として画面に載せることも堂々とできる。古い作品には夜に合う静かな文章が多い、という実利もある。
一本のパイプラインにまとめる
制作の中核は音声合成エンジンのVOICEVOXだ。クラウドサービスではなく、自分のPCの中でエンジンを起動して使う。台本を渡すと音声が生成され、そのタイミング情報から字幕を起こし、背景映像と合わせてffmpegで一本の動画に合成する。この一連の流れを、途中で人の手を挟まない一本のスクリプトとして繋いだ。
作り始めた頃は、音声の生成、字幕のタイミング調整、映像の書き出しをそれぞれ別の作業としてやっていた。1本作るたびに同じ手順を思い出し、同じ確認を繰り返す。これが一番の摩擦だった。工程を分けたまま個別に効率化するのではなく、「台本さえ用意すれば、あとは寝ていても動画ができている」状態を目標に置き直したことで、設計はかえってシンプルになった。
無人レンダリングと、人が決めること
いま、1本の動画は台本を所定の場所に置くだけで無人でレンダリングされる。とはいえ全部が自動というわけではない。どの作品を選ぶか、どこで区切るか、サムネイルの文言をどうするか——ここは人が決めている。サムネイルは動画とセットで必ず作るルールにした。動画だけ量産してサムネイルが追いつかない、という中途半端な在庫を作らないためだ。
公開は毎日21時の予約投稿で、1日1本。まとめて何本も公開したくなる日もあるが、寝る前に聴く動画という性質上、視聴者の生活のリズムに合わせて一定のペースで置いておくほうが理にかなっていると考えた。また、全動画でAIの使用を開示している。合成音声であることを隠す理由はないし、このサイトで名乗っている通り、AIを使って一人で作ること自体が私の制作スタイルだからだ。
「読み間違いのない朗読」とは書かない
チャンネルの紹介文を書くとき、「読み間違いのない朗読」という言い回しを使いたくなった。合成音声なのだから、人間のような噛みや読み飛ばしはない——一見正しそうに見える。だが採用しなかった。日本語には同じ表記で読みが分かれる語が多く、アクセントや固有名詞まで含めれば、誤読が1つもないとは言い切れない。1つ見つかった瞬間に、その宣伝文句は嘘になる。
代わりに、事実として言えることだけを書くことにした。全文字幕が付いていること。毎日21時に更新されること。反証されうる断言は、短期的には魅力的に見えても、長く続けるチャンネルの土台には向かない。無人で量産する仕組みを作れば作るほど、外へ出す言葉のほうは慎重になる。自動化とは手を抜くことではなく、人の注意を本当に必要な場所へ移すことなのだと、このチャンネルを回しながら学んでいる。